「地元の食材」と「輸入品」

飲食店を経営するためには必ず料理を作るための「食材」が必要です。その素材の持ち味でその料理の質が変わってしまうということもありますから、わざとらしくお客さんに打ち出さないまでも「料理人として」食材にはトコトンこだわりぬいてほしいものです。

例えば、「素材のそのままの味を引き出す」だとか、「どこよりも新鮮な魚を」ということを強調されてしまうと、私たち消費者はそれなりに納得してしまうものです。ですが、実はそのような「料理」は「その食材」でなければ成立しないメニューです。飲食店は小規模な店舗でも独自の食材調達ルートを持っている場合が多いです。さらにはそのようにして仕入れた食材の管理方法や特別な調理方法など、私たち一般の利用客にはわからないような仕組みを武器にして、結果として「対価を支払う価値のある料理」を私たちに提供してくれているのです。ですが、そのような飲食店には最大の「弱点」があります。

「その食材が入手できなくなったらなにも作れない」ということです。もちろん、代替品で最大限再現しようと試みることでしょうが、あきらかに産地が違ったりすると到底再現できないレベルに陥るかもしれません。そのような場合、その飲食店は八方塞がりです。それまで「その食材」をメインに料理を作ってきたのに、それが入手できないとなれば、料理がつくれず、結果営業できず、お客さんに食べさせるものもなく、売り上げがガタ落ちです。これは「地元の旬な食材」などと強調するような飲食店では致命的です。地元の食材を、外部から訪れた人においしい料理として振る舞っていた場合、代替品などはありえないのです。

そのような状況は、「趣味」であればいいのです。ただの「趣味」であれば、次のシーズンまで待とうということにもなるかもしれません。ですが、「飲食店経営」がその人の唯一の仕事であった場合、営業を止めるわけにはいかないのです。ですから無理をしてでも代替案をさがし、お客さんに訪れてもらう必要があるのです。それができなければ、半分「失業」と同じことになってしまいます。

そのようなことを回避するためには、「そのような限られた食材は使わない」ということが挙げられます。そのような食材を使わなければ、「食材がなくなる」というリスクを回避できます。自分の料理に合う、さまざまな産地の食材を最初から取り扱っていれば、ひとつの産地が壊滅的な不作に陥ってもリカバリーのしようがあるのです。食材にこだわるあまり、おのずと自分の飲食店経営をとてもリスクの高い状態で続けていたということにならないのです。

これは「こだわり」の問題であるかもしれません。ですが、「ビジネス」上ではありとあらゆるリスクを想定して経営する必要があります。「食材が枯渇するかもしれない」というリスクは初歩の初歩です。ですが、食材にこだわるあまり、つい産地を限定してしまうということなのです。そのような飲食店もスタンスとしては間違いではありません。おいしい料理を提供するという目的においては、他の飲食店とどうようなのです。ですが、「リスク」の管理ができていなければ、不足の事態がその飲食店にとって壊滅的な状況をもたらすこともあるのです。

 

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