厨房にいるのはアルバイトではないか?
ファミリーレストランなどの大規模なチェーン店では、お店の運営から何から何までがマニュアル化されているものです。その「マニュアル」こそがその店舗群を運営している「経営者」のバイブルであり、「経営戦略」そのものであるのです。経営というのは関わらない人にとっては計り知れない「投資」の連続です。ビジネスというのは「投資」と「回収」のバランスです。私たちが一般的に「働く」のは、「雇い主」がいる場合がほとんどです。「会社」という大きな組織の中で、自分の役割をまっとうし、「給料」をもらっているのです。それは働く側からすれば「当たり前」の報酬なのですが、会社側から見ればその「投資」に対してどれだけの「成果」があるのかがもっとも重要な点となるのです。一般的に働くこととは、「給料」以上の恩恵をその雇い主に返さなければいけません。その「以上」の部分が会社にとっての「利益」なのです。
一方、「働く」ということの入り口として「アルバイト」というものがあります。「アルバイト」は、定められた「時間」内に決められたことをし、その「時間」に対して給料がつくものです。一般的には、「アルバイト」の人間に対して「利益をあげろ」とは言わないものです。一般的な「正社員」よりも「賃金」が安いこともその理由のひとつとして挙げられますし、正社員よりも「簡単な」仕事をしている場合が多いからです。これは非正規雇用者に対する「差別」ではなく、一般論です。経営者にとって必要なことは、その時間内に可動するアルバイトのスタッフにいかに「有益な」仕事をさせるかということにあります。
飲食店経営の基本要素のひとつに、「ルーチンワーク」としての店舗運営があります。店舗運営をマニュアル化し、そのマニュアルを実践すれば誰でもその店舗を回していくことができるのです。それがたとえ「アルバイト」であっても、「正社員」であってもクオリティの差など感じさせない店舗運営です。それが実現できれば、飲食店経営は「低コスト化」することができるのです。ですから、大規模チェーン店などではその時そのお店を回しているのが「全員アルバイト」ということもあり得ます。ですが私たちに提供される料理はどこの店でも安定したクオリティを誇っているのです。
それが飲食店経営の基本です。かかるコストは、食材や設備維持、そして店舗の家賃などは下げようがないのです。だから「人件費」を削り、それによってコストを最小限に押さえて最大限の収益を得るのです。アルバイトに店舗を委ねるのは「マニュアル」があってこそなのですが、その「マニュアル」ことが「経営資源」ともいえるべきものなのです。だからもし、私たちが飲食店に行った際、「働いているのが全員アルバイトだ」とわかったとしても、それで成り立つマニュアルを用意しているほどの企業なのだ、ということになるのです。だから料理がまずいのではないか、などという不安は抱く必要はありません。そのようなことは気にせずに、その食事の時間を楽しめばいいのではないでしょうか。疑えばキリがないものです。そして、「アラ」などというものはいくらでも見つかります。せっかくの食事ですから、楽しむのが一番でしょう。